蕃茄之巻では、トマトのチューブ接ぎについて説明します
トマトチューブ接ぎ手順
1,
接木チューブとクリップ
2,
接木チューブ
3,
接木前の台木
4,
接木前の穂木
5,
掘り起こした台木
6,
台木をカット
7,
カット後の台木
8,
穂木をカット
9,
カット後の穂木
10,
チューブの装着
11,
穂木を挿入
12,
接木後の苗
13,
鉢に移植
14,
遮光
能書き
この資料は、接ぎ木の手順を知らない人のために作成した物です。 専門にやってる人には物足りないでしょうが、教育用資料という事でご承知おきください。
チューブ接ぎは比較的新しい接ぎ方ですが、最近はトマト等だけでなくウリ類でも見かけるようになりました。 トマトではかなり活着率は良いです。
割接ぎ同様に穂木は切断されるので、呼び接ぎよりも難易度は高くなります。 難易度が高いのは接木の技術というよりも接木後の管理技術の方で、接木作業自体はかなり簡単な部類にはいります。 ここでは接木について解説していますが、接木後の管理は結構シビアです。
トマトの接木では、台木の選定が重要です。 品種の説明にTMVの抵抗性が書かれていますので、適合する物を選ばないと最悪の場合枯死します。
今回の接木には、穂木に「ホーム桃太郎」、台木に「アンカーT」を用いて、チューブ接ぎを行います。
穂木・台木とも3/10にまきで、接ぎ木は4/6〜でした。穂木の方が若干太くなる傾向にあったので、この品種の組み合わせの場合穂木の播種を1日遅らせた方が良かったでしょう。
播きにした方が 台木はともかく、穂木が若干細く、例によって、理想的な状態ではない事を断っておきます。 この手の品種ですと穂木は5日ほど遅蒔きする良さそうです。
用意する物はたくさんありますが、遮光資材と保温資材・カミソリ・接ぎ木チューブは必要でしょう。 噴霧器か霧吹きもあった方が良いです。育苗床には電熱線を入れて、地温20℃にしています。
バラバラと置いてある透明の物が接木チューブ、商品名「スーパーウイズ」です。
透明なので、接木面がよく見えて密着しているかどうかよくわかります。 また、取っ手が付いているので接木作業が若干楽になります。
この他にも接木チューブはありますが、これが一番使いやすいと想ってます。
他に写っているのは接木クリップ各種です。 オレンジ色のものが私のお気に入り商品名「接木フレンド」ウリ科用です。 昔からあるようですが、安くて使いやすいので気に入ってます。その右にあるのがナス科用です。 右下の物はウリ科用ということで買ってきたのですが、バネが強すぎて軸を潰してしまうので使ってない物です。
穂木は「ホーム桃太郎」です。 「桃太郎」の名を持つ品種もたくさんあって、これは家庭菜園用に育種されたものです。 比較的肥料や水に鈍感で桃太郎シリーズの中では作りやすいとは想います。
掘り起こした台木です。 台木はこの後に接ぎ木して鉢に移植するので、なるべく根を傷めないように起こします。
横にあるホワイトラベルは9cmの物です。
台木を子葉の上でカットします。 台木が太いときは、第一本葉の上でカットすることもあります。
この角度と切り口のシャープさがチューブ接ぎのキモです。 台木を切った角度と、穂木を切る角度を合わせなければなりません。
穂木をカットします。 ここで注意するのは、台木と太さが合うように、カットする位置を若干調節することです。 この穂木は若干細かったので子葉のすぐ上でカットしています。
この角度が台木をカットした角度と合っているとキレイに接木できるわけです。
切り落としなので、呼び接ぎのように刃を止めることはないですから、気持ち的には楽です。
台木にチューブを取り付けます。 取り付けると言っても、単にチューブを差し込むだけです。 チューブがスコスコ動くようではチューブが太すぎる(苗が細すぎる)ので、軸を締め付けすぎない程度のチューブを使います。
スーパーウイズの拡大写真です。
材質は知りませんが、ビニールの手触りで柔らかい物です。 チューブに縦割りが入れてあるので、苗の太さに合わせて密着します。 また苗が生長して太くなったら自然に落ちてしまいます。 再利用は出来ない事はないですが、内径が伸びてしまいます。
ちなみに値段は1000個で¥4,800でした(高いなぁ)
内径には各種あって、これは一番細目の物です。 チューブ接ぎのポイントの一つとして、台木の径と穂木の径を同じに育てるということと、苗の径にあったチューブを使うことにあります。
苗箱で育っているアンカーTです。接木の時はここから掘り起こして使います。
桃太郎を含む完熟系品種は、接木をすると味が変わるといいます。 実際に味は変わるのですが、不味くなったとも言えないので、特に気にする必要はなさそうです。
萎凋病や青枯れ病など、接木が必要な病気でも出ていなければ、あえて家庭菜園で接木トマトを作る必要はないと想います。 接木苗だと高いですしね。
穂木も台木も、接木の前日くらいには少し水を絞っておいて、接木前に少し潅水しておきます。
カットする角度は30度。 かなり浅くカットします。 穂木もこの角度に合わせてカットするので、台木を切る人と穂木を切る人は同じ人にした方が角度は合いやすくなります。
直角に切って合わせても接木できるのですが、直角に切った物同士を合わせるのはかなり難しくなります。 僅かな狂いでも接木面に空気が入ってしまい失敗するのです。
浅い角度でカットした物の方が誤魔化しが利きます。
何度も書いていることですが、接木に使うカミソリは常にシャープな物を用いて下さい。 切れ味が劣るとそれだけ接木の活着率は落ちます。
刃を押しつけて切るのではなく、刃を滑らせて削ぐようにカットするとキレイに切れます。(今な説明を入れるようでは世も末だ)
この画像では穂木の上から下に向けてカットしていますが、台木を切ったのと同じ方向からカットした方が、台木と穂木の接木面の馴染みは良くなります。
やはりカットするときに、微妙な癖が出てるんでしょうね。
逆に軸が太すぎると、軸を潰してしまって全く活着しません。
カット面の背に当たる方向がチューブの割れ目と反対側になるようにして、チューブの中程まで台木の軸を差し込みます。 接木面が少しでも見えやすくなります。(気休め程度ですけど)
穂木をチューブに差し込みます。 イジイジといつまでも触っていると苗を痛めるので、さっさと接いで下さい。
軸の方向が、[10,チューブを装着]で書いたのと全く反対ですね(笑)。 ま、その程度の話しです。
接木面が見えているので、この面がしっかり合わさっているかどうか確認して接木作業は終了です。 うまくやると、吸い付くように着いています。
この面に空気が入っているようだと活着しません。
穂木後の苗の姿。 数をこなすときには、霧吹き等で水を吹きかけてやります。
節間がもう少し短くなるようにした方が、苗の安定がよいです。
なるべく早く鉢に移植します。
移植した苗は、4〜5日ほど遮光して、。それから徐々に光に慣らしていきます。
遮光した中はビニールを締め切って床にも水を撒いて湿度温度ともに上げています。
さらに、朝夕には噴霧器で霧をかけています。
この画像では、わざと被覆をめくっていますが、実際にはしっかりと密閉して湿度を保つようにします。
接木後の養生のさせかたで、活着率はかなり変わります。 少なくとも直射光は避けないと活着する前に穂木が乾燥して枯れてしまいます。 この画像から、寒冷紗の上に更に新聞史をかけて遮光しているのがわかると思います。
接木手順 こんで終わり