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2010/05修正

計算尺の調整・手入れ・補修
  はじめに
はじめに

計算尺の調整
カーソルの向き
滑尺の向き
滑尺の動き
隙間調整

手入れ
潤滑
黄ばみ・汚れ落とし

補修
カーソルが割れた
バネが無くなった
ネジの脱落
目釘の腐食
尺の傷

計算尺の手入れといっても難しいことはありません。要するに使えれば良いのです。
使いにくくなった尺を使いやすくする。目的はこれだけです。
そのために出来ることをまとめてみましたので、皆さんの尺が使いにくくなったら参考にしてみて下さい。

出来れば快適に使えれば更にいいですね。他人の尺に無い工夫を加えるのもよいでしょう。
特定の数値にマークを入れたり、特定の数値を出しやすいように刻み目を入れたり。これをオシャレと言うかどうかは問題ですが。

間違ったことが書いてあったらゴメンナサイです。ご指摘いただけたら有り難いです。
    計算尺の調整
はじめに

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カーソルの向き
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黄ばみ・汚れ落とし

補修
カーソルが割れた
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ネジの脱落
目釘の腐食
尺の傷


カーソルの向き
片面型の尺の場合、カーソルが抜け落ちる場合があり、このときうっかり逆につけてしまうことがあります。
片面型の尺の場合、尺の上側にカーソルのバネがくるように装着します。
親指側にバネがあると、親指で押したままカーソル線をあわせても、指を放したときにずれるおそれがあります。

両面型の尺の場合、カーソルが抜け落ちる心配はありません。
カーソルは尺の表面(メーカー名表記のあるほう)の上部にバネがくるようになっているはずです。
特殊尺などで特定の面をよく使うのであれば、よく使うほうに合わせて装着すれば良いでしょう。
使うのは自分なのですから、自分に合わせればOKです。


滑尺の向き
中古の尺を手に入れたとき、時々滑尺が裏向きに入っていることがあります。
上下が逆だと見ればわかりますが、表裏が逆だと気付かないのですね。
# 使っている人ならすぐにわかりそうなものですが

目安はA/B尺やCF/DF尺が対になるようにするところですね。
片面尺でS T尺が表になっているものはあまり無いですから、三角関数は裏側になるようにしておきます。


滑尺の動き
滑尺の動きが渋いと使いにくいですし、軽いとすぐにズレて使い物になりません。
軽く動いて思ったところで止まるように調整します。

まずは尺をよく見てください。
手アカや汚れが付いているのは問題外。きれいにしてやってください。
小さい歯ブラシや爪楊枝程度の道具できれいになるものです。
手アカも歴史のうちと思えば掃除する必要もありませんが、奇麗に越したことはありません。


隙間調整
一応、調整の前に尺そのものが歪んでいないか確認しておいてください。
一部分だけ引っ掛かるのは尺が歪んでいるかもしれません。竹製なら多少削って調整も可能ですが、お薦めはしません。
隙間調整は
片面尺なら、背面のアルミ板を軽く曲げて調整します。滑尺を抜いてクイクイッと曲げるだけです。曲げすぎても元に戻りますが何事も程度問題。曲げすぎたり不整一に曲げない程度の注意は必要です。

両面尺は、目ネジをいったん緩めて、絞め直します。少し緩いくらいにしておいて、グイッと握ると丁度いいくらいです。好みに合わせて調整してみてください。

 

  手入れ
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潤滑
いよいよ滑りが悪いと思われたら、潤滑が必要でしょう。
潤滑剤は、竹や木の尺ならロウが一般的です。 油は避けてください。
ほかにもタルクを使うことがあります。
タルクは、シッカロールやそろばん粉で十分です。
カーソルまで真っ白にならない程度に使ってください。
プラスティック尺や金属尺はタルクのほかにシリコンオイルを使うようですが、私は使ったことがありません。

携帯用の計算尺などは汗の湿気で動きが悪くなったりします。
持ち歩くなとも言えませんし、せいぜい擦動面をロウで守るくらいですね。

木製尺など1mm位反っていることもあります。たかが1mmですが、歪んでいると引っ掛かって非常に不快です。
直すのは困難です。 どうしてもというのであれば、熱をかけて修正してみてください。


黄ばみ、汚れ落とし
中古の尺や使い込んだ尺ではタバコのヤニ手アカ等で黄色く変色していることもしばしば有ります。
汚れも歴史のうちという考えで、そのままの方が良いと思いますが、汚れ落しもメンテナンスのうちです。 小さい歯ブラシなどでこびりついた汚れを落としておきます。
擦動面に付いた汚れもこれで落としておきます。

アルコールなどで拭いても黄ばみは落ちません。一皮剥く必用が有るわけです。
汚れ落しには「ヘンミクリーン」という専用の剤も売られていましたが今では入手は望めません。

代用品としてお薦めなのは、メラミンフォームの研磨材です。これに少し水をつけて磨いていくと、深い傷を刻むこともなく奇麗に磨きあげることが出来ます。
この材なら金属部分もぴかぴかです。タバコのヤニやボールペンのインクなど染みこんでいるものも多いですが9割方は落ちると思います。
HEMMIの尺で目盛りまで落ちたことはありません。目盛りは結構深く刻んであるので少々こすっても大丈夫です。Ricohはやや浅めで下手に擦ると消えます。pickettはまずいかな(笑

そのほかにも研磨用のコンパウンド剤も結構使えますが、目盛りにコンパウンドが残りやすいのがネックです。

母材が黒ずんでいたりするのは削らないと地肌を出すことは出来ません。
削り出しは結構シビアですのでお薦めはしません。
小口だけなら、固定尺と滑尺をしっかり留めて、両方いっぺんに加工したほうが奇麗です。

深く染み付いた汚れはは、削り取らないと取れません。RICOHの10インチ尺の金属部分に茶色い染みが出ることが多いですが、これは深すぎて取れません。、
ちょっとした染みなら前出のメラミンフォームの研磨剤でかなり落とせます。べったりついたものを完全に落とすのは無理です。

サンドペーパーでセルロイドを削ると深く削りすぎるので要注意です。はっきり言ってお勧めはしません。
320番程度の荒目のものと800〜1000番の細かい目のものを用意しておきましょう。 荒目のもので深い傷を取り、細目で仕上げです。
カマボコ板のような物に巻いて使うと平面を出しやすいです。

  補修
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尺の傷

補修になると調整や手入れよりは大仕事になってきます。
何にでも補修できる限度というものが有ります。
折れたり溶けたり大きく欠落したのであれば修復はあきらめた方が良いです。うまく行っても見た目を直すくらいが精一杯です。
擦りきれた目盛りの復活もなかなか大変です。 いや、擦り切れるくらい使い込んでやった方が幸せなんでしょうけど。

そこまで行かなくて、ちょっと壊れたくらいなら打つ手は有りますので、その手段を書いておきましょう。
  カーソルが割れた
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尺の傷


まずはカーソルが割れた場合、カーソルを無くした場合も同じです。
電話帳を用意して総まくり、片端から文具屋に電話してください。運がよければNo.2664S用のカーソルぐらいは見つかりますが、その前に計算尺が何本か見つかります(笑
替えのカーソルも入手困難なので、オークションなどで同型の尺が出たら押さえておくのも
一手です

カーソルガラスの替えを見つけるよりも、作ったほうが早いでしょう。
DIY屋に行くと透明アクリル板が手に入ります。これを使わない手はないでしょう。
各種素材でいろいろな板が出ていますし、その気になれば染める事も可能です。
透明ピンクのカーソルガラスなんてのも良いかも。

HEMMI No259D等の両面型では、カーソルガラスの厚みが1.8mm位です。
2mm厚のアクリル板で代用すると尺の表面と当たってシャリシャリします。
1mm厚だと薄すぎて尺の表面と距離が出過ぎるでしょう。
ここは傷が出来るのは覚悟して2mmで我慢するほうがいいですね。


アクリル板は、カーソルガラスの横幅(HEMMI製だと狭いほう)のサイズで板から切り出します。長い板状の材を切り出すわけです。
アクリルカッターで簡単に切れますからガラスより楽です。カーソルガラスをはめる金属枠よりほんのわずか広めに作りますので、最後はヤスリで整形して終わりにするくらいの精度で加工すると楽です。

カーソル線は長い板状の材の幅を合わせ終わったら、上から下まで一気にカッターで傷を入れます。こうするとカーソル線がブレずに引けます。
先に入れると、材の幅合わせ(=カーソル線の芯出し)が面倒です。
特に両面型は裏表連動していますから芯出しは正確にしないといけません。
許容される誤差は0.2mm位でしょうか。 上の方法で作ったカーソルなら、とりあえず表裏は合わすことが出来るはずです。

傷を入れたら、その上を赤マジックでなぞり、すぐに拭き取ります。
こうすれば赤いカーソル線を奇麗に引けます。
カーソル線は赤でも青でもショッキングピンクでも何でも有りです。
ここまで出来たら、カーソル一枚分づつ切り分ければOKです。

カーソル線が尺の側を向くようにはめてください。 外向きだと尺の面から離れてしまい視差が出ますし、線が消えやすくなります。
補助カーソル付きを作るのは大変ですね。

HEMMI NoP253やRicohの両面尺のようなモデルでは、カーソルガラスとカーソルランナーだけで出来ていますから、カーソルの製作も楽です。 ただし、ネジ穴を4つ開けなければいけませんので、先にセンターポンチで穴を開ける場所を決めます。
穴開けも手動ドリルでは厳しいので電動で開けたほうがいいです。


片面尺の場合、ガラスだけなら先と同じような方法で製作できます。プラスティックカーソルの場合、同じ物を作成するのはかなり困難です。
昔の逆C型カーソルのような形のほうが作りやすいでしょう。
やるとすればアクリルの三角材などを用いて部材を作り貼りあわせるしかないでしょう。
ついでにフレネルレンズ等を使っても面白いでしょうね。

2010/05 ITOHさんが、アクリルを貼り合わせてNo.651用のカーソルを自作されました。
  バネが無くなった
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ネジの脱落
目釘の腐食
尺の傷

結構よくあるのがバネの脱落です。
バネがなくなるとカーソルがグラグラして計算どころではありません。

青燐銅などのバネ材はハンズ等で手に入りますが、普通は入手がちょっと難しいです。
バネの幅が合わないとまったく使用できませんから、ここはなんとか入手して下さい。
一枚買えば一生物です(笑

板材で手に入れても切り出すのは結構大変だったりします。
先の細いラジオペンチなどで加工してください。
傷が付くのがいやなら布やゴム等を巻いて加工するといいでしょう。そこまでする必用も無いでしょうが。
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目釘の腐食
尺の傷

片面尺でネジを使っている場合は少ないので、ネジの脱落は両面尺の場合になると思います。
HEMMIの場合ですが、固定尺を止める長さが約1cmの大きなネジとカーソルを止める小さいネジが有ります。
どちらも銅合金製で、頭はマイナスです。 腐食にはそこそこ強いはずですが緑青を吹くことがよくあります。
149Aのような5インチ両面型は新品で手に入れても緑青が出ていたりします。


ネジ屋に見てもらったところ、HEMMI製の計算尺に用いられているネジは「挽き物」と呼ばれているもので、一つずつ旋盤で作ったものだそうです。引き出物なら幾らでもあるのに・・・・挽き物は代わりがないので大変です。
同じ物が欲しければ旋盤で挽いてもらえば出来るわけですが、素人が使う程度の小ロット生産はなかなかやってもらえません。
HEMMIの場合ですと、259Dのような両面尺をの固定尺を止める大きなネジがあります。これにも少なくとも2種類あって長さが違います。
端の処理ができていませんが、一般的な圧造成形で100本だけ作ってもらったものが有りますので、必要な方はご連絡ください。鉄製でクロメートメッキです。149A用も作ってあります。

両面型のカーソルを止めるネジにも、長さ違いなど少なくとも2種類有ります。
HEMMI製10インチ両面尺に用いている物はどれも同じのようです。長さは2〜4mmの物なら入ります
149A等の5インチ尺ではカーソルそのものが薄いのでネジも短くなっており、1.5mm程度でないと中で当たります

ネジはisoネジなので、大きなネジ屋に行くとそこそこ互換性のある物は手に入ります。
それでも頭部がマイナスのものを求めるのはかなり困難で、ピッチが合うという程度です。
頭部の形状も特殊なので、まったく同じ物は手に入りません
両面尺をの固定尺を止める大きなネジは、頭とネジの間に、ネジを切っていない部分が有ります。 出来合いのネジで同等のものを望むのは無理ですね。長さが合えばラッキーなくらいです。

ネジ製作を依頼すると最低ロットが1000本だったり単価が高くなったりします。
挽き物だと少量生産も出来るのでしょうが、近くでは作ってくれるところが見つかりませんでした。
  目釘の腐食
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目釘の腐食
尺の傷


片面尺だとアルミ製の釘で背板になるアルミ板・セルロイド板・固定尺を留めているようです。
これは腐食したらそれまでです。交換は困難ですので、打ちかえることになります。
湿気の多いところで常用したり、ポケットに入れっぱなしの尺は釘が腐食してバラバラになることも有ります。
ここまでなるのは相当使い込んだ尺ですから本当に泣けてきますね。
打ち替えは出来ても調整は更に困難。長い道のりです。

背板になるアルミ板もボロボロになっているでしょうから、ここから交換です。はっきり言って自信がありません

修復手段としては、腐食したアルミ材を全て除去して、背板には0.3mmのアルミ板を入れるのが適当かと想います。釘は真鍮の物が手に入れやすいのですが、なかなか良い長さの物がありません。穴をドリルで開け直してアルミの線材を打ち込むのも一手です。どちらにせよ、エポキシ系やシアノアクリレート系のボンドで接着しておいてからの作業になります。
現実問題としては形を復元するのがやっとなので、引退させてやってください。

2010/05 ITOHさんが、背板の交換に成功されました。詳細は計算尺愛好会のML
  尺に付いた傷
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バネが無くなった
ネジの脱落
目釘の腐食
尺の傷



計算尺も長く使っていると、セルロイドに穴があいたり、一部欠落したりすることがありますね。
上から物を落として大穴があいたと思しい尺もあります。 何事も事故は付き物ですが、壊れたら直す、これが基本。

セルロイド部分が破損した場合、破片が有るならそのまま接着するほうがいいです。
シアノアクリレート系の瞬間接着剤か、エポキシ系の2液式接着剤をお薦めします。

穴があいたり、破片も残っていない場合。小規模なら、エポキシ系の接着剤やプラスティックパテ等を充填して削り出しする手段が有ります。盛った後に痩せるので、パテは多い目に盛って後で削り出します。プラモデルでよく使う手段ですね。
充填材と母材の色目を合わすのは技術と勘が必要です。

目盛りも入れ直しですが、正確に刻むのは大変です。関数電卓等で数値を確認して目盛りを刻んでください(笑 
2目盛りくらいなら目分量で刻んでも大して誤差はないはずです。
使い込んだ尺では、角の部分が擦り減ったり(片面尺)、カーソルランナーが擦れて尺が凹んだりします。これも修復困難ですが、どうしてもというのであればプラスティックパテを盛って削り出すくらいしかありません。

HEMMIの640系は、セルロイドが竹から浮きあがることがまま起こります。
これはおそらく膨張率の違いによるものと思われますが、工程の違いかもしれません。
浮きあがった部分にエポキシ系の接着剤を充填してしっかり押さえればほぼ完全に修復できます。

尺に刻んである名前等を消したい場合は、傷が結構深く汚れも入っていることが多いので完全に消すには削り取る覚悟が必要です。

金属製計算尺の補修は、曲がりを修正するのが精一杯ですね。
滑尺を失った場合も、修復困難です。