英国のヴィッカース社製 7.7mm機関銃用の弾道計算尺です。
何に使うかというと、風速・気温・俯角・距離から、射撃角度を導き出す物です。風はもちろん、温度が違うと空気の密度が変わりますから弾道が変わってしまうのです。
今でも弾道計算尺はありますから、その先達に当たりますね。
元の持ち主は、旧日本帝国陸軍飛行第二七戦隊に付属する飛行場大隊の整備中隊将校さんだったそうで、飛行第二七戦隊は昭和13年8月1日(1938/08/01)に編成されています。
中国の河北省石家荘からマレー攻略戦に従軍しているそうです。
ビッカースの重機関銃は第一次大戦以後あちこちの国で採用されていますが、日本では1920年代からライセンス生産されています。
飛行第二七戦隊の装備する九九式襲撃機にはビッカース系の八九式固定機関銃が使われています。この計算尺はそのために持っていたと想って調べてみますと、陸軍の八九式固定機関銃は八九式普通実包(7.7 mm×58SR)を使用。.303ブリティッシュ弾を使うのは海軍の毘式七粍七固定機銃でした。
こりゃ、機材の整備用に持っていた物ではないですね。
可能性の高いのは、シンガポール入城時の戦利品ではないでしょうか。
この方は後に自衛隊の技術研究本部に行かれたそうで、そこでこの計算尺を使っていたとのことです。
しかし、技研本部でこんな物使う必要がありません。裏面にエポキシ接着剤と想われる樹脂状の物が着いています。
おそらくは資料もしくは記念品として飾られていた物ではないかと想われます。
なかなか数奇な運命を辿ってうちにたどり着いた計算尺です。作られて既に70年以上、おそらくもう出番はないでしょう。
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